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平成29年度 島根県障がい者就労支援ネットワーク強化・充実事業 発達障がい者就労先企業視察研修(東広島)報告

1.日 時:平成29年12月14日(木) 7:00 ~ 18:00

2.視察先:① 株式会社藤三 藤三センター
      ② 株式会社大創産業 特例子会社ダイソーウィング
      ③ 社会福祉法人つつじ サポートオフィスQUEST

3.参加者:17名

4.主 催:大田障がい者就業・生活支援センタージョブ亀の子

5.報 告
①株式会社藤三 藤三センター

株式会社藤三 藤三センターの障がい者雇用室長小林様より会社概要、障がい者雇用についてお話していただく。

藤三センターは、工場で集中加工することによる品質の安定と生産能力の向上、店舗での技術作業を工場製造にし店舗作業の単純化を図ることを目的として、平成9年3月に開設された。業務内容としては、商品加工をするプロセスセンター、商品の1次仕分けをするトラン
スファセンター、商品を大量に保管するディストリビューションセンターがある。

藤三センターでの障がい者雇用は、社是にある「広く地域社会に貢献する」という考えのもと、障がい者雇用を進めることは大きな社会貢献となるのではないか、さらにセンターの人材が不足している状況の中で障がい者を雇用することにより会社も助かり、雇用する障がい者にも喜んで働いていただくことでそれが家族の方への将来的な安心につながり、皆さんに喜んでいただけると考えたことがきっかけとなり、大きく進んだという。最初の障がい者雇用は平成20年3月からスタートした。商品を入れるコンテナ洗浄員の雇用についてハローワークに相談したところ、1人の障がい者を雇用することになり、その後東広島市子育て・障害総合支援センターや広島中央・呉安芸地域の障害者就業・生活支援センター(以下、ナカポツセンター)が関わるようになった。平成29年12月現在では、計23名の障がい者(内5名が発達障がいのある方)が雇用されており、コンテナ洗浄を中心に、清掃作業、製造補助作業、製造作業、機械作業といった業務を担っている。コンテナ洗浄は、一定の作業量がありマニュアルに沿ってできる、複雑ではない反復作業が多いという特徴を持つ作業であるため障がいがあっても取り組みやすいと考えたという。また、障がい者の雇用が増加したことで職域も拡大し、コンテナ洗浄以外の業務も担ってもらえるようになったという。雇用開始時は全員コンテナ洗浄からスタートするが、慣れてきた段階で清掃作業や製造補助、製造、機械作業の業務にステップアップされる方も多くおられるそう。ステップアップしてもその業務が本人に合わなければ、再びコンテナ洗浄に戻りリトライできるようにするなど、適材適所で能力を発揮することができる十分な体制が整っているという。

そして、会社が考える今後の目標は、更なる職域の拡大を目指して「1店舗1名雇用(25名店舗で25人)」を行うことだと仰っていた。

就労先企業視察研修

センター内の見学をさせていただく。
コンテナ洗浄の部門では、コンテナの仕分け、洗浄機への投入、洗浄されたコンテナの受取りといった作業をされていた。作業場が外に面しているため、夏場は暑く、冬場は寒いといった過酷な環境だが、そのような環境下でも皆さん真面目に黙々と作業をされているそう。

就労先企業視察研修 就労先企業視察研修

精肉部門では、肉の加工、商品の値付けや仕分け、コンテナ整理等を行っていた。発達障がいのある男性の従業員が作業をされていたが、私たち見学者の姿を見かけると、丁寧に挨拶されていた姿が印象的だった。

就労先企業視察研修 就労先企業視察研修

②株式会社大創産業 特例子会社ダイソーウィング

株式会社大創産業 人事・総務部の泉様より、会社概要、障がい者雇用についてお話していただく。

ダイソーウィングは、平成19年1月に株式会社大創産業の特例子会社として設立され、現在、16名の障がい者と支援スタッフが働いておられる。また、本社と併せて、全国各地の店舗で200名ほどの障がい者が雇用されているそう。

ダイソーウィングでは、本社の事務補助業務やお店から発注された帳票類のピッキング、倉庫でのダンボール組み立て、パッキンづくりなどの業務を行っておられる。最初は本社が行っていた業務をフォローするためにダイソーウィングが設立され、現在ではその9割ほどを担っているという。会社では、本社や店舗といった現場での障がい者に対する理解をいかに広げていくかを日々模索しながら、障がい者雇用を進めておられるという。

就労先企業視察研修

会社内の見学をさせていただく。
本社の事務補助業務やスタッフの朝礼等を中心に行っている作業スペースを見学する中で印象に残ったのが、職場での基本的なルールや従業員の心得等を目で見て確認できるよう様々な提示がされていたことであった。また、従業員1人1人が集中して作業を行えるよう、それぞれの作業スペースにパーテーションを設置するという工夫もされていた。

就労先企業視察研修 就労先企業視察研修
就労先企業視察研修

次に、お店から発注された帳票類のピッキング作業を行っている様子を見学させていただく。

従業員の方々は、それぞれが担当する地域の店舗から届いた「帳票用紙発注書」というものを見ながら黙々と作業をされていた。また、固定の支援スタッフが配置されており、何かあった時にすぐに対応できる体制が整っていると感じた。ここでも帳票が種類ごとに色分けされていたり、物品の入っている箱に物品名が大きく書かれていたりと、視覚的に理解できるような工夫が多く見られた。中には、トイレに行くという意思表示を言葉で行うことが難しい方のために、札を動かして意思表示ができるような仕組みもあり驚かされた。

ダイソーウィングでは、会社内のあらゆる場所で構造化などの視覚支援が行われており、障がいのある方に限らず、誰にとっても仕事がしやすい環境となっているように感じた。

就労先企業視察研修 就労先企業視察研修
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③社会福祉法人つつじ サポートオフィスQUEST

広島県発達障害者支援センター センター長の西村様より、サポートオフィスQUEST(以下、QUEST)の概要についてお話ししていただく。QUESTは発達障がいのある人の支援拠点として、平成26年4月に設立された。事業所内では、広島県発達障害者支援センター、広島中央障害者就業・生活支援センターによる相談支援事業を運営している。加えて、就職に必要なスキルや体験の機会を提供する「就労移行支援」と、義務教育を修了した既存の中等教育に馴染みにくい発達障がいのある児童を対象にした「児童発達支援」を提供する多機能型事業を行っている。発達障がいのある人の特性を考慮しながら得意なことや苦手なことを把握して、就労や社会生活に必要なスキルの向上と本人の目標をバックアップすることを目的とした機関である。西村様のお話の中でナカポツセンターの話題も出ており、在職者が増える中で求職者の確保が難しくなっている点や、まだ就職する段階ではない方の相談が増加している点など、他圏域のナカポツセンターでもジョブ亀の子と共通の課題を持っておられることが分かった。

QUESTの見学をさせていただく。
児童発達支援事業所では、15歳から18歳までの子どもたちが将来の自立や就労に向けて必要となる生活スキルや就労スキル、余暇スキル等を身につけるための訓練をされていた。就労移行支援事業所では、ピッキング作業、書類整理など事務処理作業を通して準備訓練を行っておられた。就労移行支援事業所のスタッフの方に利用者の職場実習についてお話を伺う。実習を行う場所は利用者の希望や作業能力等とマッチングができている所、また雇用の可能性が確実にある所、そして実習を行うタイミングは利用者のモチベーションが上がっている就職の直前に設定していると仰っていた。

就労先企業視察研修

6.最後に
今回の視察研修では、先駆的に発達障がいのある人々の雇用や支援に携わっておられる企業や関係機関を見学させていただきました。年々発達障がいのある人々が増える中で、私たち支援者はどのように企業にアプローチし雇用の可能性を広げていくのか、また関係機関と連携を取りながら当事者に対する支援を行っていく必要があるのか考え直すことができました。

今回参加していただいた皆様からは、「障がいのある方が働く様子や企業側の配慮を、実際に自分の目で見られたことは非常に良かった」、「島根県でも今回の視察先で行われていたような取り組みが広がると良い」、「教育現場において、障がいの有無に関わらずすべての子どもたちが基本的なコミュニケーション力を身に付けられるようにすることが大事だと感じた」等のご意見を頂き、今後の支援の参考にさせていただきたいと感じました。

藤三センターの皆様、特例子会社ダイソーウィングの皆様、サポートオフィスQUESTの皆様にはお忙しい中、視察研修の受け入れをしていただき大変ありがとうございました。

また、広島中央障害者就業・生活支援センターの皆様にはお忙しい中、視察研修の段取りから当日の案内や説明まで、大変お世話になりました。
関係機関の皆様もご参加いただきありがとうございました。

就労先企業視察研修

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