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平成30年度島根県障がい者就労支援ネットワーク強化・充実事業 障がい者雇用事業所視察研修(安来) 報告

1.日 時:平成30年11月17日(土) 8:30 ~ 16:00

2.視察先:① 株式会社日立金属安来製作所 山手事務内
      ② 社会福祉法人せんだん会ワークセンターやすぎ フェグリルどじょっこ(就労継続支援A型)
      ③ 株式会社 日立金属安来製作所 海岸工場

3.参加者:25名

4.主 催:大田障がい者就業・生活支援センタージョブ亀の子

5.視察報告
①株式会社日立金属安来製作所 山手事務内

グループ長森本様と係長祖田様の案内で総務部施設管理グループ内を見学させていただく。
不要書類シュレッダー作業では、一定期間の保管後、廃棄可能となった資料やファイルを丸ごと回収し、クリップ、ビニール、付箋・インデックスなど徹底した分別作業を行い、その後最終工程としてシュレッダーを行う。この分別作業を徹底することで、機械の故障はゼロだという。書類をそのまま廃棄すると1㎏30円で業者に引き取られるが、シュレッダーしたものは、1㎏12円。故障をなくすことや経費を削減することで会社に貢献しているのだと話された。

大型機械には安全のためのカバーや操作し易い運転スイッチ、機械の状況を光で知らせる電子版など、業者に依頼しオプションをつけておられた。書類ケースを置く棚は、工場の部品を使った手作りのもので、移動しやすいようにローラーや傾斜がついていた。
雇用開始時は全員シュレッダー作業からスタートし、その後様々な作業に挑戦していくという。

事業所視察研修(安来)事業所視察研修(安来)事業所視察研修(安来)

次にパソコンを使った作業現場を見せていただく。一人ひとりパソコンを使い名刺・証明写
真の作成、スキャナー作業をされていた。証明写真は、写真データの色編集や指定のサイズにカットするまできめ細やかな仕事をされていた。
スキャナー作業では、飛行機や車の部品の書類など、サイズがスキャナーからはみ出すもの
も小道具を工夫し、しるしをつけながらパソコンに取り込んでおられた。それぞれ責任を持
って作業に集中されている様子が伺えた。ここでも作業台の高さや棚の位置など、自社の技
術を生かし効率よく作業できるよう工夫されており、細かい配慮が感じられた。障がいのあ
る方に限らず、誰にとっても仕事がしやすい環境になっていた。

事業所視察研修(安来) 事業所視察研修(安来)

見学する中で印象に残ったのが、職場での基本的なルールや従業員の心得等を目で見て確認できるよう様々な掲示がされていたことであった。

事業所視察研修(安来) 事業所視察研修(安来)

見学後、森本様より会社概要、障がい者雇用についてお話していただく。

業種は鉄鋼業(特殊鋼の加工)。工場全体の従業員は1000人。そのうち障がい者は19名。

今回見学させていただいた総務部施設管理グループでは従業員23名。そのうち障がい者は
12名。内訳は身体障がい者2名、知的障がい者2名、発達障がい者8名と、発達障がい者
が多いのが特徴。支援側は森本様と祖田様を含め職員3名がジョブコーチの資格を取得し、
他、障害者職業生活相談員5名という体制をとられている。

障がい者雇用に取り組んだきっかけは、2011年鉄鋼業の障がい者雇用除外率が30%か
ら20%に引き下げられ、日立グループの中で障がい者雇用率を達成していない事業所の1つに安来製作所がピックアップされたことだったという。現在は雇用率2.39%。障がい者
採用後、離職ゼロが自慢だと嬉しそうに話されたのが印象的だった。

当初は、障がい者を雇っても仕事が何もなく、各所を訪れ「何か仕事ない?」と尋ねて歩いたが断られ続けたという。これでは無理と、積極的営業に切り替え「何かある!」「こうしてみてはどうだろうか!」と提案をしながら現場と一緒に考え、困りごとのあぶり出しを行っていったという。依頼された仕事はそれ以上のものにして返すことで信頼関係が生まれ仕事は年々増えていった。現在はシュレッダー作業、社宅・寮など福利厚生施設の修繕整備、工場内緑地管理、間接業務補助作業、伝票整理、会場設営などの業務をされている。

それぞれ向き不向きはあるが、これだけしかできないのではなく、すべての作業を経験し多能化を進めておられた。また仕事をローテーションすることでお互いの気持ちもわかり合えるという。障がい特性や、聞いた情報で相手を決めつけず、いいところを探しながらお互い足りないところを補っているのだと話された。

指示してできないことは、指示が悪かったのだと反省し伝え方を工夫したりと、上から目線ではなく対等目線の支援体制が整っていると感じた。

その後の質疑応答では、
Q:雇用する上で求めることは?
A:規則正しい生活をすること。一人で通勤。挨拶。わからないことは、わからないと言える勇気を持つこと。ただ数をこなせばいいのではなく安全第一。危ないことに気づける人。
Q:障がいへの理解などの職員研修はありますか?
A:毎月一回職員が集まり、現在の課題や問題点、うまくいかないのは何が悪かったのか話
し合い共有している。

次に、当事者である石倉様にお話していただく。

現在は工場内の木や草、芝の手入れなどをされている。やりがいは、木の刈り込みにより周
りの風景が美しくなること。外から来た方は清々しい気持ちになるし、工場で働く職員も気
持ちよく仕事ができる。景観の向上に貢献できているこだと話された。

難しいところは、3年半先輩たちに教わりコツもわかってきたが、勝手な判断で枝を切れば
木が枯れてしまいやり直しがきかないので、わからないことがあれば必ず聞くようにしてい
る。と話された。

資格取得にも次々に挑戦されており、立派な発表からは前向きな姿勢が感じられた。
最後に森本様から、「色々な辛い経験もしたかもしれません。でも過去は変えられない。未来をどうするかを考えてほしい。われわれは障がい者だからといって特別扱いはしません。配慮はします。報告は大事です。伝えるのは無料なので情報を勝手に閉じずに何でも伝えてく
ださい。」とメッセージを送っていただいた。

事業所視察研修(安来) 事業所視察研修(安来)

② 社会福祉法人せんだん会ワークセンターやすぎ カフェグリルどじょっこ(就労継続支援A型)

カフェグリルどじょっこにてボリューム満点の昼食をいただく。
職員の方に少しお話を聞くことができた。

カフェの他に配食サービスや仕出し、子供食堂もされている。配食サービスは年中無休でシフト制。30名の障がい者を雇用されており、配食弁当は一日300食。配達は職員(運転手)と障がい者の2名体制でされているとのこと。

事業所視察研修(安来) 事業所視察研修(安来)

③ 株式会社 日立金属安来製作所 海岸工場

再び森本様に同行していただき工場内をバスで見学させていただく。工場内の広大な敷地に
は、4車線の道路、バス停もあった。左右に巨大な建物が並び、中までは拝見できなかった
が、それぞれ何を製造しているのか丁寧に説明してくださった。敷地内には庭園が広がっており、すべて総務部施設管理グループ担当で整備をされている。草刈りや芝の手入れは行き届いていたが、剪定作業は進んでおらず、仕事が山積みだと話された。工場内では毎年駅伝が開催されているそうで、仕事以外の余暇も充実していると感じた。

6.最後に

今回の視察研修では、先駆的に障がい者雇用をされている株式会社日立金属安来製作所を見学させていただきました。私たち支援者は企業開拓に向けてどのように働きかけていく必要があるのか考えるきっかけとなり、また当事者の方々にとっては一般就労を目指すきっかけになったと思います。

今回参加していただいた皆様からは、「支援者としての指示の方法や、傾聴する姿勢をより一層意識していきたい」「日立金属安来製作所さんのような企業を増やす為にも、支援員の役割は重要であると感じた」「作業支援はもちろんだが、周りの理解、努力、キーマンの存在が必要であると感じた」「一般就労後もキーマンとなる職員との信頼関係は大切だと感じた」等のご意見を頂き、今後の支援の参考にさせていただきたいと思います。

株式会社日立金属安来製作所の皆様にはお忙しい中、視察研修の受け入れをしていただき、また、当日の案内や説明まで親切に対応していただきありがとうございました。

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