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令和元年度 島根県障がい者就労支援ネットワーク強化・充実事業 障がい者雇用企業見学会 報告

日 時:令和元年8月7日(土) 13:00~16:30

見学先:①株式会社 サンパ工業(大田市久利町)
    ②社会福祉法人 大田市社会福祉事業団 ビラあさやま(大田市朝山町)

主 催:大田障がい者就業・生活支援センタージョブ亀の子
    石見大田公共職業安定所
    浜田公共職業安定所川本出張所

参加者:9事業所 参加人数12名 ハローワーク2名 ジョブ亀の子4名
    参加者合計18名

視察報告:

① 株式会社 サンパ工業

工場長 上田様のご案内により、サンパ工業で雇用されているAさんの仕事の様子を見学させていただく。工場内は外気温よりも暑く、過酷な作業だったが、コンクリート用鉄筋のスペーサー取り付け作業を任され、集中して仕事に取り組んでおられた。 上田様より、会社概要と雇用までの経緯、現在の状況についてお話をしていただく。

会社概要としては、平成25年に、旧三瓶工業と旧波多コンクリート工業が合併、社名が株式会社サンパ工業となる。本社工場(見学先)と静間工場があり、従業員数は約20名。ブロック・道路用側溝・マンホールなど、コンクリート二次製品の製造と販売を行っているとご説明いただく。

Aさんは勤続9年目。1日2時間の実習から始まり、チャレンジ実習、委託訓練、トライアル雇用を経て、現在の常用雇用に繋がった経緯を説明していただく。Aさんがされている仕事は覚える内容も多く、健常の方でも容易ではない仕事内容であったため、当初は説明方法や理解がどれぐらい出来ているのか事業所として不安を持っておられたが、Aさんの真面目な性格もあり、一人で任せても手抜きをせず、自分で仕事を覚えるためにノートを書いたり、努力を怠らず仕事へ打ち込んでおられた。その成果もあり、他の従業員と遜色ないほど仕事を任せられ、今では天井クレーン操作の技能講習も修了され、鉄筋の不良品検品、材料の在庫管理・発注、製品生産量の見通し把握など多くの仕事を任せられるようになった事をお話しいただく。リフト作業や高所で危険性の高い作業については配慮されていたり、Aさんの苦手とするコミュニケーションについても決して強要される事なく、自然に本人のありのままを受け入れておられる様子を聞かせていただいた。また、今後は必要な資格取得も可能性として考えておられ、Aさんが自信とやりがいを持って働き続けられるように、本人と事業所が寄り添って仕事をされている様子をお話しいただいた。

質疑応答(Aさん)
Q サンパ工業に就職を決めた理由は?
A 実習をやってみて、自分にできそうな作業だと思った。

Q 仕事をするにあたって気を付けている事は?
A 腕や腰などに、負担が掛からないように、出来るだけ体全部を動かすようにしている。
  元気に働くためには体調管理が大事だと思い、会社の健康診断に引っかかったことがきっかけで3年前から、野菜ジュースや青汁、糖の吸収を抑えるお茶を飲んでいます。お昼も普通サイズの弁当から、小さい弁当とサラダに変えました。

Q 仕事で分からない時はどうしていますか?
A 分からない事があったら、周りの従業員さんや工場長に聞いて、ミスがないようにしています。

Q 仕事の中で工夫している事は?
A 大事なことはメモを取っています。自分で工夫して、在庫管理もやっています。

Q 休日は何をしていますか?
A 家でゆっくりして、一週間の疲れを取っています。買い物には行きます。

Q 今後の目標はありますか?
A 体が動くうちは、サンパ工業で働いていきたいです。

質疑応答(事業所)
Q 難しい仕事と聞きましたが、一人で出来るようになったのはどれぐらいですか?
A 他の人でも覚えるのに1年は掛かる仕事ですが、Aさんは1年経たずに覚えられました。

Q 危険への配慮はされていますか?
A 特に危険性の高い、リフト車の操縦や高所作業は他の従業員がしていますが、本人もそれを分かっておられるようで、勝手に危ない事はされません。

Q コミュニケーションが苦手と聞きましたが、何か配慮はされていますか?
A 雑談は難しいですが、仕事の報告・連絡・相談は自発的にされていたり、飲み会に誘うと嫌な様子もなく参加されるので、特別な配慮はしていません。

Q 今後も資格取得など見通しはありますか?
A 本人の仕事の様子など見ながら、今後考えていきたいと思っています。

障がい者雇用企業見学会 障がい者雇用企業見学会
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② 社会福祉法人 大田市社会福祉事業団 ビラあさやま

  所長 安道様より、事業所の障がい者雇用の現状とBさん雇用までの経緯と現在の状況についてお話をしていただく。事業所概要としては、現在大田市内に数か所、高齢者のデイサービス・入所施設等、また保育園もあり、従業員数は現在159名。障がい者雇用については、ビラあさやまともう1施設で1名ずつ雇用されているが、0.5ずつで雇用率のカウントとしては1のため、法定雇用率には達していないのが現状との話をしていただく。Bさんは、ある日突然「自分の家から通える場所で、ここが良いので働かせてください」と言って訪ねて来られた。その後にハローワークへ相談され、ハローワークから紹介されたジョブ亀の子を利用して、職場実習を行った。事業所としても、午後の時間帯で介護職員が通常業務と合わせて行う事が難しい浴場清掃、皿洗い、環境整備をBさんにやっていただける事について有り難く思っておられ、就職に繋がったという経緯を話していただいた。また、浴場清掃については、年に2回の法定点検があり、クリアするためにはBさんが行っている毎日の清掃は大変重要な役割である事もお話しいただき、その後に質疑応答をさせていただく。 

質疑応答(事業所)
Q  難しい事や困っている事はありますか?
A  洗剤の使い方・洗い方・掃除のやり方など、私たちが当たり前だと思っていた事が本人にとっては当たり前ではなかったので、最初は皿洗いの場面では洗剤の量とスポンジの使い方から細かく伝える事をした。その時には必ず、やり方を教えるだけでなく、どうしてそのやり方をするのか。という理由まで添えて、本人に伝えるようにしている。作業に慣れてくると、掃除のやり方など自分流になっているため、定期的にチェックをするようにしている。

Q  配慮されている事はありますか?
A  Bさんの利用者さんへの関わり方については、清掃・補助員として役割分担を本人の中でも意識してもらい、直接介助はしないようにBさんと日々確認をしながら徹底している。一方で、利用者さんとのコミュニケーションについては、重度の方に関しては他の職員が対応しているが、Bさんはお話が好きなので、利用者さんのお話相手になっておられる。利用者さんにとって、Bさんは大切な話し相手であり、スタッフの一人として定着している。

Q  障がい者雇用に向けてのアドバイスはありますか?
A  本人の特性や育った環境など汲み取り、関わっていく事も大切だが、その上で職員として言うべき事はちゃんと伝える事、また必要な事は繰り返して伝えていく事も重要。利用者や外部の人から見れば障がいの有無に関わらず、一人の職員として見られるので、お互いに意識を持ちながら接していく事も大切。

  安道様のご案内により、Bさんの仕事の様子を見学させていただく。3つの浴場のうち、特殊浴場の清掃をしておられた。浴場によって清掃方法は異なり、洗剤や掃除用具など数種類の道具を使うため、当初はBさんに分かりやすく各道具の正しい使い方や水の流し方など、なぜそうするのか、そうしないと汚れがどのように溜まっていくのか、など工夫してBさんへ仕事の指導や助言をされていた様子をお話しいただく。お風呂場という事で湿度も非常に高く、厳しい暑さの中で清掃をされていたが、見学者が見ていても集中力を切らす事なく、一人で熱心に清掃をされていた。
その後、Bさんにお話しを伺い、質疑応答をさせていただく。


質疑応答(Bさん)
Q 仕事をしていて良かったことは?
A 利用者さんとお話しをするのが好きなので、楽しい。

Q 通勤はどのようにしていますか?
A 現在は視力が落ちて見えにくいため、お父さんの車で送り迎えしてもらって通勤しています。

Q 困った事はありますか?
A 掃除や皿洗いなど、一通りの仕事が終わって時間が余るときもあるが、出来るだけ自分で仕事を見つけるようにしています。それでも手が空くときは、職員さんに相談します。

Q 休み明けなど、仕事に行きたくないと思ったことはありますか?
A それはないです。出来れば、もう少し仕事に出たいです。仕事は昼からですが、1時間前には出勤して、利用者さんが出口から出ていかないか見ています。玄関近くの事務所に居ると、利用者さんが通った時に話しかけてくれるので、お話をするのが楽しいです。

Q 休日は何をして過ごしていますか?
A 弟に運転してもらって、イベントに出かけたりしますが、先に家の事をやっておかないといけないと思うので、農作業や草刈りをやっている事が多いです。小学校3年生から草刈り機を使っていますが、今は生命保険に入っていないと危ないので草刈り機は使えません。

Q 今後の目標は?
A 体調を崩さないようにして毎日仕事をする事と、施設のお風呂は年に2回の検査があるので、クリアできるように意識して綺麗にしている。

障がい者雇用企業見学会 障がい者雇用企業見学会
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③ ハローワーク石見大田にて意見交換

参加者の皆様には自己紹介をしていただき、本日の企業見学をされた感想と会社概要や障がい者
雇用等についての現況等をお話していただく。

〇 今井産業 株式会社 肥川様、入江様
 現在、1名の方を雇用しており、草抜きや掃除などをお願いしている。社会的責任を感じているが、会社としては雇用率達成が出来ていないのが現状。建設業では現場に出ると危険を伴うという事もあり、難しい面はあるが、この課題を克服していきたい。

〇 イワタニ島根 株式会社 井上様
 現在、身体障がい者1名雇用しているが、雇用率は未達成。現場はガスや危険物取扱の資格等が必要なため、障がい者雇用に向けての一歩が踏み出せていない。

〇 大田中央自動車 株式会社 根冝様
 障がい者雇用については分からない事ばかりだが、この度10日間のチャレンジ実習の受け入れを予定している。まず出来る事からやっていこうと思う。

〇 島根電機 株式会社 甘利様
 会社ではコネクタの電子部品製造をしている。初めての参加で色々と学ぶ事があった。今後の障がい者雇用への参考にしていきたい。

〇 株式会社 島根リネン 日熊様
 多数の障がい者雇用をしている。見学先で輝いている当事者の方々を見ることが出来た。本日の様子を会社の皆に話していきたい。

〇 stitchcraft 山本様、中田様
 縫製工場、洋服販売をしている。人員確保が課題として参加した。障がい者に対する専門的な支援は難しいが、簡単な仕事から初めていきたいと思えた。

〇 株式会社 松崎製作所 財間様
 鳥井に本社があり長浜にも工場がある。長浜工場では従業員53名の内、精神障がい者1名雇用。
 チャレンジ実習から正規雇用に繋がり現在2年目になる。精神的な波はあり欠勤も多いが、月1回のミーティングとその他現場でも、声掛けや対応など配慮して、主にラインの周辺作業をやってもらっている。今後は鳥井工場でも雇用を検討していきたい。

〇 株式会社コッシーふぁーむ 越田様
 農業では障がい者に等しい人も多く、差別をしたくないとは思っているが、合理的配慮として必要な面もあると考えている。一人の方は、邇摩高校から卒業後就職されたが、入社した後に母親から「発達障がいがあります」と言われた。手帳もなく、本人の自覚も不明であり、どのように対応しようか迷っている。

〇 大田市役所 地域福祉課 山脇様、坂田様
 部署に1名障がい者の方が居られる。仕事は早く、福祉課としての仕事だけでなく、他の課からも仕事をもらって頼りにされている。コミュニケーションなど難しい面もあるが、仕事に意欲的に取り組んでおられる。本日の見学会で学んだ事を今後の参考にしていきたい。


④ 現在、障がい者雇用をされている企業より

〇 株式会社 松崎製作所 財間様
 チャレンジ実習ではラインの周辺作業をしてもらった。就業・生活支援センター リーフとも相談しながら支援を検討していき、現場にはキーパーソンを置いている。周囲には障がい説明を特別にしている訳ではないが、声掛け等の配慮は常に行っている。

〇 今井産業 株式会社 肥川様、入江様
 草抜きや環境整備については、工夫として範囲指定をする事で本人にも分かりやすい仕事内容となり、現在では順調に仕事が出来ている。

〇 株式会社 島根リネン 日熊様
 会社の作業特徴を生かして、障がい者も健常者も隔たりなく、共存して流れ作業の仕事が出来る環境作りをしている。また、仕事経験の豊富な障がい者の方からは教えてもらえる事も多く、何でも言い合える関係性が出来ている。
   
〇 大田市役所 地域福祉課 山脇様、坂田様
 本人の特性を生かして、事務補助作業をしてもらっている。仕事時間が空いてしまい少し戸惑っておられる場面もあるが、仕事は早く正確なため、周りからの信頼は出来ている。

障がい者雇用企業見学会 障がい者雇用企業見学会
障がい者雇用企業見学会 障がい者雇用企業見学会

⑤ 浜田公共職業安定所 川本出張所 所長 伊藤 憲幸様より

 本日ご参加いただいた皆様には、障がい者雇用をされている現場に足を運び、事業所見学と合わせて、事業主や当事者の方々と対面して話をしていただいた事で、価値ある1日になったと感じた。

 障がいは、いつ誰がなるか分からないが、障がい者として始めから特別視するのではなく、同じ土俵に上げて、そこから出来る事を確認していく事が大切であり、そこに差別ではなく区別は必要。

 この機会に学び、感じた想いを各々持ち帰っていただき、まずは障がい者雇用について会社の中で考えてみる事こそ、障がい者雇用に向けての大きな一歩。

 今後も障がい者雇用を促進していけるように、ハローワークも前向きに取り組んでいきたい。

⑥ 企業見学会を終えて

 この度の企業見学会において、企業における障がい者雇用への関心が大きくなっていることを感じた。今まで障がい者雇用に向けて、仕事の種類や危険性など、漠然とした不安を抱えておられた方々も、現場を視察され実際の就労までの経緯や企業の取り組みを聞かれ、当事者との関わり方や仕事の様子など、実状を知っていただく事が出来る、有意義な時間になった。

 意見交換会では「指導者がいない」「やってもらえる仕事の内容が分からない」など、現状として企業が抱える課題を提起されたが、一方で「実習を前向きに検討したい」「雇用に向けて、企業としての課題をクリアしていきたい」など、前向きな意見も挙げられ、障がい者雇用理解を深めていただく良い機会になった。この見学会での繋がりを今後の障がい者雇用に向けて活かし、引き続き企業側との連携を密にして行きたいと思う。

⑥ 最後に

 株式会社サンパ工業の皆様、社会福祉法人大田市社会福祉事業団ビラあさやまの皆様には当日の 案内、説明まで大変お世話になり、ありがとうございました。

ご参加いただいた企業の皆様、ありがとうございました。

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