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令和元年度 島根県障がい者就労支援ネットワーク強化・充実事業 障がい者雇用事業所視察研修(岡山・吉備) 報告

日 時:令和元年11月28日(火) 8:15 ~ 18:30

場 所:パナソニック吉備株式会社

主 催:大田障がい者就業・生活支援センタージョブ亀の子

参加者:13名

視察報告:

パナソニック吉備株式会社

見学の最初に、総務課 課長 赤木様よりパナソニック吉備株式会社についての説明をしていただく。岡山県が緑あふれる大自然の中に、人間性豊かな新しい街づくりを進めている「吉備高原都市」の一角にあり、日本で初めての第三セクター方式による重度障害者多数雇用事業所、パナソニック株式会社の特例子会社として1981年に創業され、障がいのある人もない人も共に力を合わせて、自然に恵まれた快適な環境のもとで、事業活動を行っている様子をお話いただく。

吉備高原都市では、保健施設、福祉施設、職業訓練校、職業リハビリ、医療リハビリなど、人間性豊かなコミュニティーの中で、立地・環境を活かして、サポート施設との連携による就労支援が推進されていた。障がい者雇用としては、当初は身体障がいの方が多く、来年で創業40周年を向かえる現在では知的障がい、精神障がいの方も雇用されている。業務内容は、RoHS検査業務(構成部材で特定有害物質含有率の数値確認)、a-MROオペレーション(間接材購買システム)の電話やメールによる受発注管理、アクセサリーキット組立(箱詰め等の簡単な作業)などがあり、障がい特性や個人に合った業務が振り分けられている。就労環境整備として、ハード面ではバリアフリー化(自動ドア・スロープ等)、健康管理、オープンで車イスの行き来しやすい効果的な作業場、フリーデスク、ぬくもりのある憩いの食堂、ICT(情報通信技術)活用推進などあり、ソフト面では障がい者も健常者も、同一賃金同一労働による平等な評価、月単位のフルフレックス制勤務導入など取り組まれていた。課題としては、身体障がいの方は長時間同姿勢の業務による褥瘡、尿路感染症等の予防、知的障がいの方は変化への対応、生活面で世話人等の支援者との連携、聴覚障がいの方はコミュニケーション、発達・精神障がいの方は、医療機関や支援機関との連携が挙げられており、全体としては高齢化も課題として挙げておられた。

障がい者雇用事業所視察研修(岡山・吉備) 障がい者雇用事業所視察研修(岡山・吉備)

地域コミュニティーの中にある会社の役割としては、職場実習生の受け入れ、就労に向けての訓練・実習計画・職業能力評価計画作成など、就労・自立支援活動を行っておられた。また、環境地域貢献活動(CSR活動)として、アルミ缶リサイクル活動・エコキャップ活動・地域清掃活動や、緑あふれる吉備高原で、障がいのある人もない人も、同じフィールドで共に参加し、競い、お互いの理解を深め、交流を広めるとともに、競技力向上、健康や体力づくりを目的とした、吉備高原車いすふれあいロードレースの開催も行われている現状をお話いただいた。

皆が健やかに働き続けるためには、健康管理、日常生活管理、対人スキル、基本的労働習慣など、生活の基礎的な部分が大事であると、社内で常に伝えておられる。

障がい者雇用事業所視察研修(岡山・吉備) 障がい者雇用事業所視察研修(岡山・吉備)

その後、総務課 課長 赤木様、荒井様の案内で、社内の施設・工場見学をさせていただく。
見学前の説明をしていただいた会場においても、車イスの高さで室内の様子が伺えるように、ドアに付いている窓ガラスが大きく、更衣室では車イスの方が使いやすいように、ロッカーを地面から約1メートル程度底上げしておられ、ズボンの履き替えが出来るようにベッドも完備され、更衣室の向かいには、健康管理や筋力維持・向上のためのトレーニングルームが設置されていた。また、棟間のスペースには美郷町出身の山田さんが使用している、内部が中村ブレイスで作成されたカヌーと練習用設備があり、パラリンピック出場に向けて、会社として応援されている様子が見られた。

玄関には車イス専用の車輪泥落とし機が設置され、廊下や部屋の中にある掲示物は全て車イスの方も見やすい高さに掲示され、内容も知的の方でも分かりやすいように、数字や文字だけでなく絵や記号で表記されている物も見受けられた。

障がい者雇用事業所視察研修(岡山・吉備) 障がい者雇用事業所視察研修(岡山・吉備)

作業スペースでは、障がいがありながらでも一人一人が作業をしやすいように、要望に合わせて作業台の高さや形を変えたり、作業用道具の紛失や製品への混入を防ぐためにワイヤーを取り付け管理をされていたり、効率的且つ安全で、常に綺麗に保たれている会社としての努力を見せていただいた。
 
また、作業スペースの至る所には、ユーモア溢れるネーミングの設備があり、コストバスターズプロジェクトという名前で、事務用品や道具の不用品を集めて、誰でも自由に再利用できる場所も設置されていた。

障がい者雇用事業所視察研修(岡山・吉備) 障がい者雇用事業所視察研修(岡山・吉備)

見学の後半では、美郷町出身の山田さんがおられる部門にも行かせていただき、山田さんが会社の携帯を片手に、パソコンに向かって真剣に仕事をしている姿を見せていただいた。山田さんとも少しお話をさせていただき、ジョブ亀の子相談員との久しぶりの再会や、遥々島根県から見学に訪れた方々を見て笑顔になり、「本当にお世話になりました」「今はここで楽しく仕事をやっています」と、心強い言葉を頂いた。

障がい者雇用事業所視察研修(岡山・吉備)

見学後、課長 赤木様へ質疑応答をさせていただいた。

Q 工程の改善を沢山見せてもらったが、誰がどのように改善していっているのか?
A 改善担当者は居るが、現場の人たちでフォローできる箇所は出来るだけ、現場で行っている。他社との競争の中では、改善・工夫が非常に重要になってくる。

Q 社員のモチベーションを維持していく工夫はありますか?
A 障がい者も健常者も、同じ土俵で平等に評価をしている。テーマを決めて15分間、上司が部下の話を傾聴する為の「1on1ミーティング」を行っている。茶菓子を食べながらコミュニケーションを図るための「職場会」を行っている。

Q 就業・生活支援センターの定着訪問は、どのようにされていますか?
A 知的、身体の方の時はあまり考えていなかったが、精神の方には月1回程度の定着訪問をしてもらっている。本人の調子が良好の時に承諾を得て、PT・OTとの連携も多く行っている。

Q チームサポート、1対1でのサポートはどのように行っていますか?
A スキルアップマップ&作業訓練計画表にてサポート(15名チームで、年2回リーダーが確認)
  個人では、資格取得に向けた勉強等を行っている。

Q 離職状況はどうなっていますか?
A ホームシックや体調不良、職場環境が合わずにリタイアされる方も居る。
  同じ障がいの方同士、先輩・後輩の関係性で相談をし合っている。前職場では、健常の方から気を遣われて辞めてしまった方も、同じ仲間が居る職場で働きたいと希望して入社され、良い環境なので長く続けていきたいという声がある。精神の方は、日により体調変化があるため、対応が難しい分、離職の可能性もある。

Q 就業・生活支援センター含め、関係機関に求めるものは?
A 第三者としての助言の必要性は大きい。精神の方に対しての支援方法など助言。補助金や支援制度など、専門機関からの説明をかみ砕いて分かりやすく伝えてもらう事。

最後に、パナソニック吉備株式会社では、全職員を対象に「あいサポーター」の研修を行い、役付き者は「精神・発達障害者しごとサポーター」や生活相談員の資格取得など、企業全体で障がい者就労支援に力を入れている。とお話いただいた。

パナソニック吉備株式会社 課長 赤木様 荒井様、山田さん、お忙しい中、視察研修を受け入れていただき、当日の案内や説明まで親切に対応していただきありがとうございました。また、視察研修にご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

障がい者雇用事業所視察研修(岡山・吉備)

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