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平成22年度島根県障がい者就労支援ネットワーク構築事業・米子視察研修 レポート

日 時:平成22年12月15日(水) 8:40~18:40
視察先:障害者就業・生活支援センターしゅーと (米子市)
    障がい福祉サービス事業所・あんず&あぷりこ (米子市)
    三光株式会社潮見工場 (境港市)
    ワタキューセイモア株式会社 (米子市)
    株式会社彩々 (米子市)
参加者:30名
主 催:大田障害者就業・生活支援センタージョブ亀の子

視察報告
①障害者就業・生活支援センターしゅーと
  しゅーと所長の中島様より、就労支援の取り組みとして鳥取県内3圏域の状況と各関係機関との連携についてお話いただく。
  また、ネットワーク構築事業として「障がいのある方の一般就労をすすめる会」の立ち上げから現状、事業主との連携の取り組みと現状についてお話いただく。

  • 平成15年1月より「とっとり障害者就業・生活支援センター」として開設、平成18年10月より現在の「障害者就業・生活支援センターしゅーと」に名称変更
  • 県内3センターの内、最初のナカポツ事業という点や関係機関同士のネットワークが上手く構築できているため、数字的な実績も上がっている。一般就労に向けての関係機関や事業主の意識の高さが伺える。
  • 年間約100名の登録がある。一般就労への意識とスキルの準備ができているかを見極め、登録を行い支援に入る。
  • 関係機関とのネットワークの始まりは、平成19年6月以来開催してきた「就労支援担当者会」。月1回(平日午前の1時間半程度)の定例会で、雇用支援や就労支援に関する情報提供や、実習受け入れ情報や求人情報の発信の場として、参加したい希望の機関が集まっての敷居の低い会が、強いネットワーク構築の基盤となった。
    現在は、平成22年5月から「障がいのある方の一般就労をすすめる会」として立ち上げ、さらに地域の支援者同志の情報交換や共有、勉強会などのスキルアップに取り組む。
  • 事業主との連携については、雇用側のネットワークを構築する取り組みを模索中。しゅーとが関わる約200社のうち61社を対象に声をかけ7月に第1回情報交換会を開催。これもしゅーとや福祉施設への要望や雇用機関同士の情報交換、情報提供する場といていく予定。


障害者就業・生活支援センターしゅーと視察障害者就業・生活支援センターしゅーと視察


②障がい福祉サービス事業所・あんず&あぷりこ
  管理者の大塚様より、事業内容や一般就労に向けた取り組みについてお話いただく。
  また、「カフェレストあぷりこ」にておいしい昼食をとらせていただく。

  • 事業内容は、就労移行支援事業(定員6名)と就労継続B型事業(定員14名)として、レストランと喫茶及びパン工房で作業を行っているという。登録者は44名いるが、そのうち38名が精神障がいをお持ちの方で、週数日利用や半日利用といった利用の方が多い。
  • 一般就労に向けては、就労移行支援事業からこれまでに4名が就職をされる。作業訓練の他、面接練習、就職相談会への参加、職場実習などしゅーとと連携をしているという。
  • もともと法人母体が精神障がい者の授産施設だったため、利用者の大半が精神障がいをお持ちの方で、精神障がいの特徴を理解しながらの取り組みに励んでおられる。


障がい福祉サービス事業所・あんず&あぷりこ視察障がい福祉サービス事業所・あんず&あぷりこ視察障がい福祉サービス事業所・あんず&あぷりこ視察


③三光株式会社潮見工場
   工場長の岩本様より、会社概要と障がい者雇用についてのお話をいただく。その後、障がいをお持ちの方が働いておられる現場を見学させていただく。
   リサイクル業を行い、主にごみの焼却や廃油の処理を中心に事業を展開される。

  • 従業員数25名でその内2名の知的障がいをお持ちの方を雇用されておられる。会社内13ある工程内のうち、最後の工程であるスプレー缶プレス機の場所に2人が配属され、一定の間隔で缶を機械に流していく作業を行っている。
  • 工場内はとても寒く、必要な人材としては1日中同じことを繰り返すことができる根気強い方、仕事を休まない方が条件だという。有機溶剤を利用する工場のため、なるべく安全な工程に入ってもらっているという。


三光株式会社潮見工場視察三光株式会社潮見工場視察


④ワタキューセイモア株式会社
  リネンサプライ・洗濯業を行う。障がい者雇用は随分前から行い、現在は6名の障がい者を雇用される。最初に係長の松本様の説明で工場内見学を行った後、質問に答えていただく。

  • 6名の障がいをお持ちの方が1日4時間から6時間の勤務で、各工程に配属されている。病衣のサイズ仕分け作業やシーツ・毛布・枕カバー等の分別作業、洗濯物の出し入れ作業、機械操作をされており、長い方で約20年勤めておられる。
  • 障がい者雇用の取り組みは、最初は雇用義務から始まった。就職までに身につけておいてほしいことは、挨拶などの当たり前のことが当たり前にできることだという。最初は作業時間がかかるが、地道に頑張れば会社としても生産性が上がり戦力となるのでありがたいと話される。


ワタキューセイモア株式会社視察ワタキューセイモア株式会社視察


⑤株式会社彩々
  弁当等に利用する野菜のカット業務を行う会社。
昨年11月に、重度障がい者多数雇用事業所として出発。現在12名の障がいをお持ちの方が働いておられる。
最初に、キャベツを包丁を使ってカットする業務を見学させていただいた後、社長の塩谷様より会社概要と障がい者雇用の取り組みについてお話いただく。

  • 包丁を使っての野菜カット業務は、たまねぎ、にんじん、キャベツなどを大量にカットする。
    最初は包丁の使い方がうまくできなかったが、ジョブコーチの利用等により少しずつコツを覚え、今では上手に使いこなすようになったという。
  • 必要な人材は、指示を聞いて、しっかり理解してくれる根気強い方だという。
  • 障がい者雇用のきっかけは、この業界は業務内容からもみて人手を確保することがとても難しいということで、障がい者雇用を考えたところからだという。現在12名の障がいをお持ちの方が働いておられるが、おそらく健常者を10人雇っていたら、根気強さが続かず、定着していなかったかもしれないとのこと。障がいをお持ちの方は、作業を覚えるスピードや作業スピードはゆっくりだが、コツコツ継続して頑張るよさがあることと、何かあったら支援者がサポートしてくれること、休ます安定して働いてもらえることといった点で定着率が高い。そこが、障がい者雇用をして良かった点だという。
  • 企業が障がい者雇用は難しいと思う理由は、やったことがない不安からだという。まずは職場実習からやってみて、よければ雇用をしてみて、雇用して継続ができなくても、それを失敗と考えるのではなく、次の方にチャレンジしてみる。そうすることによって必ずマッチングできる方があるという考え方でありたいと話される。


株式会社彩々視察株式会社彩々視察


(最後に)
 今回の米子視察研修では、就労支援に携わる施設職員をはじめ、市町村職員、養護学校教職員、当事者と様々な方が参加され、一緒に視察研修ができたことにより、参加者相互のつながりもでき、とてもよかったと思う。

 鳥取県西部地域の一般就労に向けての関係機関同士のネットワークはとても強く構築されていると感じた。平成19年度より月1回の就労支援担当者会を開催し、関係機関同士が情報提供や情報交換を行いながら、少しずつ職員自身の意識改革やスキルアップをされてきたことが大きいと感じた。様々な関係機関が一つの機関だけではなく、地域全体で障がい者の一般就労を考え、支援していこうという敷居の低い意識と、関係機関同士の得意分野不得意分野を把握しながら、障がい者中心の支援を行うことが大切だと思った。

 また、三つの企業見学においても、それぞれの会社が、障がい者雇用における考え方をしっかり持っておられること、また、受け入れ方にも十分な配慮があることなど、三社とも障がい者雇用をマイナスではなく前向きに考えておられるところには感動した。企業からの声を聴くことで、今後企業へのアプローチなど、就労支援のヒントをつかめたと思う。

 最後に、視察研修の段取りから当日の案内や説明まで、米子市にある障害者就業・生活支援センターしゅーとの職員の皆様には大変お世話になりました。ありがとうございました。

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