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平成30年度島根県障がい者就労支援ネットワーク強化・充実事業 障がい者雇用企業見学会 報告

1.日 時:平成30年7月20日(金) 13:15 ~ 16:30

2.見学先:① 社会福祉法人仁摩福祉会しおさい(大田市仁摩町)
      ② 帝人コードレ株式会社(大田市長久町)

3.参加者:8事業所 参加人数9名  ハローワーク2名 ジョブ亀の子4名 実習生1名 参加者合計:16名

4.主 催:大田障がい者就業・生活支援センタージョブ亀の子
      石見大田公共職業安定所
      浜田公共職業安定所川本出張所

5.視察報告

①社会福祉法人仁摩福祉会しおさい

 事務長兼総務課長 白枝様、施設長 加藤様のご案内により、しおさいで雇用されているAさんの仕事の様子を見学させていただく。写真で作られた手順書に沿って、便座、便器、床、扉、取っ手などの掃除、作業終了後の指さし確認、掃除チェック表への記入を手際よく行っておられた。

白枝様より、Aさんの業務状況について説明をしていただく。Aさんは、事業所内の全てのトイレ掃除(利用者用)、手すり拭き、共有廊下部分のモップ掛けを担当されている。就職と同時にジョブコーチによる支援を受け、用具の使い方や掃除の手順等を一から身に付けられた。就職当初から現在までで変わった点としては、業務時間の短縮と掃除に対する意識の2点が挙げられるという。始めはトイレ1ヶ所の掃除に1時間ほどかかっていたのが、現在は30分で終えることができるようになった。また、最初は、作業の質よりも時間を気にして動いてしまう癖があったが、現在は、「きちんときれいにしてから次の行動に移る」ことを意識して業務を行うことができている。その他にも、どのようにしたらきれいになるのかを理解してもらうため、汚れ(クレヨン)を塗ったタッパーを実際に拭いてみてもらう、便器のぬめりなど目には見えにくい汚れを素手で触って確認してもらうなど、事業所として様々な工夫を行ってこられた。

 次に場所を移動して白枝様、加藤様より、事業所概要、障がい者雇用の状況などについてお話をしていただく。現在、法人全体では5名の障がい者(身体1名、精神2名、知的2名)を雇用している。今回は、仕事の様子を見させていただいたAさんを含め3名の方について説明をしていただいた。

  • Aさんについて
    養護学校時代に行った介護実習がきっかけとなり就職に至る。これが法人として初めての障がい者雇用となった。今年で勤続10年になる。事業所としては、就職時よりジョブコーチによる支援を導入したり、業務終了後の日誌記入や定期的な指導職員との面談によりモチベーションのアップを図るなど様々な配慮を行ってきた。Aさんの全体的な評価としては、基本的な挨拶がきちんとできること、体調管理が十分にできておりほとんど休むことがないといった点が挙げられる。
  • Bさんについて

    同法人のむつみ苑に勤務。東部高等技術校時代に行った実習がきっかけとなり就職に至る。ジョブコーチによる支援を2回に渡って受けられ、よりいっそう業務の定着が図られた。清掃業務、介護補助業務を担当。ジョブコーチ、養護学校の教員、技術校の指導員、ジョブ亀の子といった多くの関係機関が関わり、定期的な職場訪問を行うことで、本人のモチベーション維持に繋げることができている。また、仕事だけでなく生活に対しても目が届く範囲での指導を行っている。Bさんの全体的な評価としては、掃除の能力アップなどが挙げられるが、まだ体調管理が十分にできていない部分もあるため、その点については指導が必要と考えている。
  • Cさんについて

    同法人のほほえみに勤務。介護業務全般(車の運転、1人で行う業務を除く)を担当。高校卒業後、一般の介護職として就職されるも、なかなか業務を覚えられない、利用者対応が上手くできない、車で物損事故を起こすといった問題が多発していた。支援機関への相談により、発達障がいの診断を受けるが、業務を制限することで雇用を継続している。きちんと診断を受けられたことで、落ち着いて仕事ができるようになっている。また、Cさんの能力的に高い部分(強み)が目立つようになり、周りからも評価されるようになった。今後は、医療機関やジョブ亀の子と連携を図りながら、少しずつ業務の幅を広げていきたいと考えている。

質疑応答(Aさん)
Q 仕事のやりがいは?
A ご利用者から、「ありがとう」と声をかけてもらえること。

Q ジョブコーチなど、周りの方から細かく指導を受けることに対してどう思うか?
A 色々と教えてもらえる方が助かるので、指導を受けるのは嫌だと感じたことはない。

Q 休み明けなど、仕事に行きたくないと思うことはあるか?
A 行きたくないと思ったことはない。

Q 仕事で困ったときには誰に相談するか?
A 担当職員に相談している。

Q 休日は何をして過ごしているか?
A 家族で出かけたり、飼っている犬の世話をしている。

Q 今後の目標は?
A 頑張って仕事を長く続けること。

質疑応答(事業所)
Q 1人1人の業務内容はどのように決めているのか?
A あまり業務内容が変わらない方が良いと思われる方には、ずっと同じ作業を行ってもらってい
る。変化に対応できる方の場合は、本人の状況に合わせて、ジョブコーチなどにも入ってもらいながら様々な業務に取り組んでもらっている。

就労先企業見学会 就労先企業見学会

②帝人コードレ株式会社

総務管理課 総務班 班長 波多野様より、事業所概要、障がい者雇用の状況などについてお話をしていただく。現在、会社全体では4名の障がい者(身体2名、精神2名)を雇用している。3年前に初めて精神障がい者を雇用したが、1日に何度も相談に来られるなど苦労した点が多かった。会社としては、その方を初めから否定することはせず、まずはすべて受け入れて話をしっかり聞く、丁寧に業務の指示をするといった対応を行ってきた。昨年度、普通高校より新たに就職された2名の方に対しても、何かあればその都度相談に乗るなど丁寧な対応を心掛けている。

次に、波多野様、総務管理課 課長 高橋様のご案内により、2グループに分かれて2名の方が働かれている様子を見学させていただく。Dさんは、社内で生産された人工皮革、合成皮革を目視で検査する仕事をされている。会社としては、Dさんが作業中に分からないことがあればすぐに相談ができるよう近くに先輩社員を配置するなどの配慮を行っている。見学中もDさんが先輩社員とやり取りをする姿が見られた。また、Dさんは集中力が非常に高く、別のことに気を取られず作業ができる、他の方が見つけられないような異常も見つけることができるという強みを持っている。
次に、Eさんの様子を見させていただく。Eさんは、社内で生産された人工皮革、合成皮革の性量試験を行っている。会社が行っている配慮の1つとして、重たい物を持つことができないEさんを身体的な負担がかからない部署に配属したことが挙げられる。


質疑応答(Dさん・Eさん)
Q 入社して良かったことは?
A 自分に仕事が合っている、やりがいがある、楽しいと感じられること。世代の違う人たちと関
われること、仲良くできること。自分の自由に使えるお金がもらえること。責任感の必要性を実感
できること。

Q 今後の目標は?
A 早く仕事に慣れて、皆と同じ仕事ができるようになりたい。体調をきちんとコントロールし、薬に頼らないようにしていきたい。

質疑応答(事業所)
Q 障がい者雇用を行う上で大切なことは?
A 会社の中に、必ず1人はキーパーソン(相談できる人、対応できる人)をつくっておくこと。何か問題が起きたときに、すぐに対応できることが必要。

Q 配属先をどのように決めたら良いか?
A 1人1人の状況を考慮した上で、その方が働きやすいと思われる部署に配属している。実際、現場に話を持っていくと反発されるケースもあるが、共に働くことで少しずつでも理解は進んでいると感じている。また、障がい者を雇用する際は、必ず専務がリーダー職以上の社員に対して説明を行い、障がいへの理解を促している。

Q 障がい者雇用されている方の雇用条件(勤務時間、給与など)について
A 勤務時間は8時半から17時までで、休日出勤もある。残業は本人に無理のない範囲で行ってもらっている。給与は他の社員と変わらない額を支給している。

就労先企業見学会

③ハローワーク石見大田にて意見交換

参加者の皆様に自己紹介をしていただきながら、本日の感想・会社の状況などをお話していただく。

○ 石見ワイナリー株式会社 杦村様
実際に障がい者の働く姿が見られたのは良かった。現在の業務内容や貰っている給与に対する本人の満足度はどの程度なのか気になった。帝人コードレのように、適材適所で雇用ができるのは良いと感じた。自社における業務内容は多種多様ではないため、どのような業務をしてもらえるのか検討する必要があると感じた。

○ 株式会社魚の屋 中島様
来春、2名の方を雇用予定。業種は異なるが、障がいのある方が実際に働く様子を見ることができ、大変参考になった。

○ 株式会社オーサン 角田様
どの企業でも、本人との話し合いの場をきちんと持っていたので、話し合いを大切にしていきたいと感じた。

○ 株式会社大屋ハイテック 河鰭様
障がい者雇用に関して、年々企業側のニーズも変わってきていると感じている。以前、障がい者を雇用した際には、社員の理解を求めることや本人に対する指導方法の難しさなどを痛感したが、今後も、積極的に雇用は考えていきたい。

○ 株式会社コッシーふぁーむ 越田様
以前、働いていた会社には身体障がいの方しかいなかったため、今回、知的障がいの方が働く様子を見て、障がい者の見方を変えていかなければならないと感じた。

○ 社会保険労務士法人 田平労務管理事務所 郷原様
障がい者を雇用する上で、会社内に最低1人でも本人に寄り添う人が必要だと強く感じたが、従業員が少ない事業所ではなかなか難しいと思った。

○ 有限会社ドリームシステム ドリームデイいろり 岩谷様 高野様
現在1名の方を雇用しており、次のステップアップも考えたいと思っている。今回見学を行い、会社としてもう少し本人に寄り添っていかなくてはならないと感じた。

④最後に

社会福祉法人仁摩福祉会しおさいの皆様、帝人コードレ株式会社の皆様には、当日の案内、説明まで大変お世話になり、ありがとうございました。 ご参加いただいた事業所の皆様、関係機関の皆様ありがとうございました。
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